その気になれば幾つになっても変えられる。

話し方/you表現studio のblogへようこそ

こんにちは。


昨日までのどんよりした空模様とは一転

久々に太陽が顔をのぞかせました。

何もなくてもそれだけで気持ちが明るくなります。




昨日Kさんがレッスンに見えました。

60代のご婦人ですがいつも明るく

元気に「こんにちは」と言って

入っていらっしゃいます。

Kさんの良いところはいつもニコニコしている事です。

笑顔はそれだけで若々しく見え

お孫さんが二人いるとは思えないほどです。

少し雑談をした後、発声練習をしました。

口をしっかり開けてお腹から声を出すので

張りのあるよく通る声です。




Kさんの勉強の目的は声を出す事です。

声がしっかり出ることで自信につながったからです。

今でこそ明るく元気溌剌ですが

実はKさん

昔はどちらかと言うと消極的で少し

オドオドしたところがありました。




出会いは今から30数年前、私が教えていた

話し方教室に初めて勉強に見えたのです。

声も小さくどちらかと言うとこもった感じで

遠慮がちでした。



少し通っては休み又しばらくして見えるといった

感じでした。

10年前、私がここ青山で話し方の個人スタジオを

開設した時、しばらくしてKさんが見えました。

発声練習をしてもどういうわけか肝心の声が

お腹から出ていないのです。

何故だろう？



それが不思議でなりませんでした。

いくらレッスンしても口元だけで声を出すので

大きな声が出せません。



これはひょっとして技術的な事ではなく

心因的なものかもしれない

そう思い少し立ち入ってKさんにお聞きしました。

何か我慢をしているとか、遠慮して

自分を押さえつけているのではないか

そう思い

ズバリお聞きしました。





すると的中したのかKさんは頷かれたのです。


原因は家庭内にありました。




当時、お姑さんだけではなく未婚のご主人の弟も同居。

その中で

仕事を持ちながら家の事も全てやらなければなりません。

しかもそのお姑さんは言葉もきつく

Kさんが育った環境とはまるで違い

それこそ当時まだ若かったKさんは口答えなどできず

ひたすら我慢の連続だったようです。

ご主人はもっぱら仕事人間で家では無口。

Kさんをかばったり感謝を口にするような人ではなく

孤立した中で二人のお子さんを育てたそうです。






朝は早くに起きて食事の支度、夜は夜で

決まった時間に姑に食事を出し

子供達と夫の時間帯が違うため

何度も上げ下げして片付けたりと

黙々と家事一切をこなしていたのです。

お盆の時期になれば人の出入りも多く

自分は扇風機もない暑い台所に立って

天婦羅を揚げたりかぼちゃを煮たりと

客人に振る舞う料理をひたすら作ったとか。

姑も夫もそれに対して手伝うでもなく

エアコンの効いた部屋で当然のように

過ごしていたとのことでした。

まさに昭和の時代のお嫁さんです。

或るとき、そんな生活に疑問を持ったのでしょう。

”自分が思っていた生活とは何か違う・・・”

それが行動を起こした第一歩

話し方の勉強にいらしたわけです。

Kさんから話をお聞きし合点がいきました。



長い間の我慢と心の鬱積

声を出すうえでそれらが邪魔をしていたのです。

それを少しずつ取り除くようにしました。

不満を言葉にしていく

声に出していく事で

気持ちが軽くなります。

そこから少しずつ声を出すトレーニングを

していきました。

徐々に以前とは違い声が出るようになってきました。

声を出すことでそれまで抱えていたイライラや悩みが

大したことではないように思えてくるものです。

そして明るい良いものの考え方をしていく事で

自分自身が変わっていきます。

Kさんもその頃から少しずつ

自分の考えや思いをハッキリ言葉にして

家族に伝えるようにしていったのです。




これまで我慢してできなかったことを

取り戻すかのように習い事も始めました。

Kさんが最後にスタジオに見えたのは

今から5～6年前の事です。

その後、又勉強を再開したいとの連絡をいただいたものの

運悪くコロナに突入してしまいました。






そんなこんなで今年の4月、数年ぶりに見えました。

年月が経っているのに以前よりずっと若々しく

溌剌としています。

何も言えずひたすら我慢をしていた頃とは

まるで違います。

それは自分らしく生きているという

内面から滲み出てくる自信かもしれません。

当時のきつかったお姑さんも今や９０歳を超え

寝ていることが多く

施設に入らずに矢張り家がよいようです。

ご主人も定年で家におり日中は親子水入らずで

丁度良いのでしょう。

Kさんは仕事と趣味と家事と生活に変化があり

きっと今が一番いい時なのでしょう。

発声トレーニングとお喋りでKさんは

元気に帰っていかれました。

張りのあるよく通る声

自分の思いをきちんと伝える

これは自信となり、その気になれば

幾つになっても自分を変えられるものだと

Kさんを見ていて感じました。

あなたも決して遅いという事はありません。

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