こんにちは。

先日久しぶりにAさんからお電話があり

少し慌てている様子でした。

お聞きすると96歳になるAさんのお母さんが

亡くなられたとのこと。

葬儀は家族葬で執り行うとの事でしたが

ご兄弟がそれぞれにお母さんへの感謝の言葉を

朗読するということでした。

そこで急遽原稿を見てもらえないかと

いうものでした。

日にちも時間もありません。

とりあえず書いたものを送って

いただき、同時に

ご本人が還暦の時にまとめたという

ご両親と一族のヒストリーなるものが

送られてきました。

そこには

Aさんは5人兄弟の末っ子で

子供の頃は生活も貧しく継ぎの当たった服を

着ていたこともあったとか。

本棚が欲しくても買えず、父親に牛の糞取り作業を

2週間することでその対価として買ってもらった事などが

書かれていました。

Aさんから送られてきた原稿には

お母さんの事がいくつか書かれていましたが

要点だけで抽象的でした。

この中から一番心に残っていることを

一つ上げてもらい詳しくお聞きしました。

高校時代に欲しかったラジカセ

当時で5万円位していて自分の貯金では

買えなかったこと。

或るとき学校帰りに母親がパートをしている

スーパーの衣料品売り場に立ち寄り

「ラジカセが欲しい」と一言。

何を思ったのかそれから間もなくして

母親が「これで買いなさい」とお金を

出してくれた事。

そのお金は2~3か月パートをして

やっと溜めたお金であることはAさんもわかって

いながら、それでもラジカセが欲しくて

すぐにそのお金をもって買いに行ったそうです。

このエピソードに絞りました。

そして

「その時の嬉しかったこと

45年経った今でもラジカセ大事に

もっていますよ」

と語りかけるように話すことを

伝えました。

Aさんの原稿の中に

「なんてすごい母ちゃんだ!」

という表現があり

これこそがAさんの飾らない気持ちだと思いました。

それは90歳過ぎてから大病を患い

その後も骨折や頭を打つなど

様々な怪我に見舞われながらも

愚痴も文句も言わず強い精神力で

見事乗り越えたこと。

その時のAさんの思いだったのでしょう。

今では事業も成功し社会的にも

立派な方ですが

その原点は

「凄い母ちゃん」と思えるところに

あるような気がします。

最後に

「厳しい中で五人の子供を育て

欲がなく、見栄も張らず

家族のために無償の愛を注いでくれたお袋

本当に ありがとうございました」

と締めくくりました。

初めに同居していたお兄さん夫婦への

感謝とねぎらい

そして最愛のお母さんとの思い出と

感謝

Aさんからも

「これで気持ちが伝わると思います」と

お礼のメールが入りました。

コロナが感染し始めてから

葬儀の形も一気に家族葬に変わりました。

それまでは大勢の弔問客が訪れて

遺族にとって悲しむ間もなかったと思います。

私も昨年96歳になる姑を亡くしましたが

普通なら田舎の事ですから

近所隣、少しでも顔見知りだとみんな

弔問に訪れます。

ところがコロナで緊急事態宣言が

出ていたこともあり

まわりもみんな高齢者。

こちらからお断りして本当に内々だけで

行いました。

その分ゆっくりと思い出を語ることができ

いい時間が過ごせたと思っています。

今回の事で

子供たちがそれぞれに思い出を語り

朗読するのもいいものだと思いました。

子供と言ってもみんな孫がいる年齢。

それでも母への感謝を伝えるという事は

亡くなられたお母さんは勿論

自分たちの子供や孫にとっても

いい事だと思いました。


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